9月に入り多くの学校で新学期・新年度が始まると共に、例年になく暑かったミシガンの夏もようやく終わりを告げたようです。更に輪を掛けて暑かった日本の夏も残暑から初秋の気温に移るといいですが。先月号ではサッカーワールドカップロシア大会の話のみで終わりましたので、今月号は他の話題にしたいと思います。

日本の夏と言えば『熱闘甲子園』、夏の全国高校野球選手権を抜きでは語れません。我家はジャパンTVを契約していないため、実況中継や録画放送を視聴出来ず、現場の熱気と迫力を伝える臨場感は味わえませんが、各種メディアからのニュース、インターネット情報によると第100回記念大会に相応しい球史に残る試合の連続だったようです。過去の大会で甲子園出場経験があり記憶に残る懐かしいOB達が毎試合入れ替りで始球式を務め、高校野球ファンの遠い記憶を呼び起こすと共に記念大会の盛り上げに一役買っていました。決勝戦は大阪桐蔭高校が秋田の金足農業高校を破って優勝し、2度の春夏連覇という史上初の快挙を成し遂げました。春の選抜、夏の甲子園で一度優勝するだけでも大変なのに本当に凄い偉業です。優勝した大阪桐蔭高校が脇役のような扱いを受けて大阪人を嘆かせたのが、決勝戦で負けた金足農業でした。公立の農業校で地方大会から甲子園本大会決勝まで毎試合レギュラー9人を一切代えず勝ち抜いて来ましたが、それまで全試合完投で投げ続けていた3年生エースの吉田投手が決勝戦で初めて途中交代したのみとは驚きです。プロ野球球団関係者、評論家などから一気に注目を集め、卒業後プロ入りとなれば大阪桐蔭の中心選手達などと同様にドラフトの目玉の一人となりそうです。日本全国で熱中症で亡くなる方も出る程の猛暑、酷暑の中で頑張った各校の選手、監督、コーチ、マネージャーの皆さん、応援で頑張った各校の生徒や関係者、そして球場に足を運んだ一般の高校野球ファンの皆さん、お疲れ様でした!!

一方当地米国ではオールスターゲーム後のMLBペナントレース後半戦が佳境に入っています。地区優勝またはワイルドカードでプレーオフ、ディビジョンシリーズ、更にワールドシリーズへと続くフォールクラシックの頂点を極めるのは果たしてどのチームでしょうか?また、先月末からニューヨークで始まったテニスの今期メジャー最終戦U.S.オープンと男子プロゴルフのシーズンフィナーレを飾るフェデックスカップのプレーオフ残り2試合で日本選手がどこまで上位に食い込めるか?優勝争いに加われるか?応援しながら戦況を見守りましょう。

さて、今回は『憎まれっ子世に憚る』というテーマです。

7月、8月と日本および米国で著名人逝去の訃報が続きました。

日本ではTVから家庭に笑いを届ける長寿番組『笑点』のレギュラーおよび司会を長年務めた桂歌丸師匠が亡くなられました。私が高校・大学時代に毎週楽しみにしていた番組で同じくレギュラーと司会を務めた故人の先代三遊亭円楽師匠との丁々発止の掛け合いが大好きでした。庶民肌・苦労人タイプで髪の薄い歌丸師匠とちょっと秀才・エリートっぽい艶やかな黒髪の円楽師匠の対比がピッタリはまる構図でした。晩年は病気がちで入院・休養したりもしましたが、笑点以外にも呼吸困難を補う酸素ボンベを携帯しながら高座に上り続け、今では他に演じる噺家がいない長編の古典落語を演じたりしていました。同門、他門の区別なく弟子や後進への指導・アドバイス、支援を惜しまず、自分と芸には厳しく努力を続けた古き良き時代の正統派落語家では最後の名人かもしれません。類稀(たぐいまれ)な勇姿と話芸がこの世ではもう見られなくなって寂しい限りですが、天国の皆さんを笑わせてあげて下さい。ご冥福をお祈り致します。(合掌)

一方米国では7月にCNNの旅行・食文化取材番組「パーツ・アンノウン」のパーソナリティーであったアンソニー・ボーデイン氏が取材旅行中のパリの宿泊ホテルで亡くなられました。突然の訃報だけでも信じられませんでしたが、死因が自殺と分かって更にショックでした。同番組はニュースに特化したTV局であるCNNとしては極めて異色の番組で、当初は局内でも「何でこれをCNNで?」と疑問の声もあったそうですが、17歳の時にニューイングランドの片田舎の港町のレストランでシェフ見習いから料理に携わり、修行を重ねた後ニューヨーク市内にもレストランを構える有名オーナーシェフとなり、引退後は料理・食文化研究・評論家として世界各地を旅していたようです。縁あってCNNから同番組パーソナリティーの企画を持ち込まれて賛同し、取材を始めて今年で10年目。「パーツ・アンノウン」としては第5部の取材旅行に取り掛かっていた矢先の不幸な出来事でした。私も当初番組名を見て「何だろうか?」と思いましたが、たまたま観たところ、世界各地の有名・無名の人々と食(のみならず衣・住も合わせた)文化をユニークな切り口で紹介する内容で、日本の典型的な旅行番組やグルメ番組とは一味も二味も違っていて大いに興味をそそられ、ちょくちょく観るようになりました。番組の魅力は、先ず自分が行けない世界の各地に行ってそこの有名シェフや名もない一般人と出会い、現地の特有の食材や料理方法を使って一緒に食事をしたり、周辺を散歩したり、イベントに参加したりしながら、そこに住む人々の生活や歴史、文化、価値観などをありのままに紹介してくれるので、自分が同じ体験をしているような臨場感がありました。日本のちょいとアングラっぽい東京編や地方都市編もありました。いつでも何処でも誰とでも楽しそうに取材している姿しか印象にないので、自殺したというのが未だに信じられません。一体何が引き金となったのか?番組の取材旅行先として南イタリアの低所得層地区、東南アジアの開発途上国(ベトナムが特にお気に入りのようでした)やハワイ諸島の少数民族など決してお金持ちではなく、物も豊富でないけれど、素朴で自然なありのままの生活を幸せに送っている人々と交流し、お金と物は溢れる程あるけれど、嘘と欺瞞に溢れた米国の現実世界に戻ると「何が幸せなのか?」疑問を抱き、虚構にも見える先進国の生活に失望してしまったのかもしれません。一流シェフの腕を持ち、青年時代には薬物中毒で施設に入院・更生の経験もあるユニークな経歴と飾らない人柄、話術が視聴者を魅了し、本人も予想だにしていなかった長寿番組になりつつあったのに大変残念です。今となっては“Rest in peace.”としか言えません。

もう一人は先月亡くなられた『ソウルの女王』と呼ばれた地元デトロイト出身の歌手アリサ・フランクリンさんです。教会の牧師さんであったお父様の影響で教会のゴスペルシンガーとして歌い始め、高音から低音まで幅広い音域と豊富な声量、抜群の歌唱力で見る見る頭角を現し、歴代大統領の就任式での国歌斉唱、ローマ法王の御前での歌唱、来賓のオバマ前大統領を涙ぐむほど感極まらせたケネディーセンターでの熱唱など数々のエピソードがあります。中でも特に心に残るのは、女性歌手として初めてロックンロールの殿堂入りするほど有名になった後も生まれ育ったデトロイトに住み地域への恩返しを続けた事、料理を作って振舞うのが好きで近場のクローガーで食材の買い物をして自宅で料理したり、公演先や宿泊先で自ら料理をして共演者に振舞った事など微笑ましいエピソードです。また、自分の人生で最も誇りに思う事は何か?と問われ、歌手として名を成した事よりも良き母親であった事を最も誇りに思うと答えたのも極めて印象的でした。彼女にも“R.I.P.”の一言。

更に追い討ちを掛けるようについ先日共和党のジョン・マケイン上院議員が亡くなられ、直ぐには心の整理がつきません。機会があれば改めて触れたいと思います。

「善い人ほど早く亡くなってしまう。」などと言いますが、「もっと長生きして欲しかった。」と惜しまれながら逝ってしまう善い人達が多いですね。「早く亡くなるのが善い人か?」というと必ずしもそうではなく、「逆もまた真」とは言えません。

それにしても「憎まれっ子世に憚る」とは良く言ったもので、この言葉は自己顕示欲が強く、自己中心的で他人に配慮しない言動で米国内の対立・分裂や諸外国との衝突・軋轢を招き続ける米国の現大統領にピッタリ当てはまりますね。それぞれ人格者であった上述の故人の皆さんと比べると(比べる事自体おこまがしいですが)人間としての度量と品格に天と地程の差があります。米国だけでなく世界中を取り返しのつかないほどメチャメチャにされる前に自らでも他力でも早く表舞台から消えて欲しいものです。「命長くして恥多し」とも言いますので、他人の事はともかく私も徒に長生きして多くの恥を晒し、「憎まれっ子世に憚る」のケースにならないようにと自戒の念を強くして筆を置くことにします。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。