「本当に惜しかったですねぇ」。先月フランスの優勝で幕を閉じたサッカーワールドカップロシア大会の日本代表サムライブルーの対ベルギー戦の話です。皆さんも日本だけでなく世界各国から発信のニュースや各種メディア報道などで山ほど見聞きする機会がおありだったと思いますが、世界ランク3位の優勝候補であるベルギー相手に大善戦。グループリーグの最終3戦目の対ポーランド戦終盤にボール回しで時間潰しをして不評を買ったモヤモヤ感を一気に吹き飛ばしました。

ベルギーのスタープレーヤーであるアザール選手、ルカク選手、デブルイネ選手に思ったようなプレーをさせず前半を0-0で耐え忍んで向かえた後半、何とか先取点が欲しいところで柴崎選手の長めの鋭い縦パスにタイミング良く反応した原口選手が相手ディフェンスをかわして右外にボールを持ち出した時はやや角度的にシュートが難しくなったかと思いましたが、相手ゴールキーパー名手クルトワ選手が二アサイドを打ち抜かれないようにポスト側に1~2歩詰めて体重が左足に掛かったタイミングで逆をついたシュートがファーサイドのサイドネットを揺らしました。「良くやったー!」と思わず拍手してしまいました。

更に数分後敵陣ペナルティーエリアやや外の左側で香川選手がノールックパスで柔らかく預けたボールを受けた乾選手が右にワンタッチで持ち出しやや中央に寄った所から大きく構えずサッと打ったシュートが1点目とは逆側のサイドネットに突き刺さりました。恐らく相手のキーパーもディフェンスも(味方のチームメンバーも)まさかあの場所からあのタイミングでシュートを打つとは思っていなかったと思われますが、スローモーションのビデオで見ると野球のナックルボールのようにほぼ無回転でしかもキーパーから遠ざかるように右に少し切れながらの見事なゴール!TV画面に映る2-0のスコアを見て、「えっ、本当に?」と思うほど信じられない光景でした。ベルギーの選手達の表情にも大きな落胆の色が見え、予想外の日本チームのプレー振りに対する驚きと自軍のプレーが思ったように行かない苛立ちが伺えました。全く予期せぬ出来事、誰も予想だにせぬ嬉しい大事件が目の前に展開して、「ひょとしたら勝てるかも!?」と期待が膨らむと同時に「相手に点をやるな!1点取られると浮き足立つから、反撃を防いで残り時間10分位まで0点で抑えて!そうすれば何とかなる!」と思っていた矢先に詰まらぬゴールを許してしまいました。

交代枠2名を同時に使い高さのあるフェライニ選手とスピードのあるシャドリ選手を入れて攻勢を強めたベルギーに、日本自陣ゴール前の中途半端なパンチングとクリアボールを繋がれて角度のない距離もある所からベルトンゲン選手のヘッディングシュートが決まってしまい、がっかりでした。一見シュートかパスか中途半端なヘッディングだと思ったのですが、ビデオハイライトで見直すと彼が冷静にファーポストを狙って打ったものでしたね。日本の守備隊形が乱れてスクランブル状態になり、ゴールキーパーの川島選手が二アサイドのポスト近くに寄り過ぎていたのと通常ファーサイドのポスト側ゴールライン辺りでキーパーをバックアップする筈のディフェンスの選手が誰もいない一瞬の隙を突かれました。その数分後にアザール選手の左サイドからのクロスをフェライニ選手に打点の高いヘッディングで叩き込まれて2-2の同点。フェライニ選手は足技やスピード、細かい動きなどはいまいちなのですが、敵陣ゴール前の空中戦で強みを発揮します。ルカク選手一人だけなら吉田選手と昌子選手の連携で何とか抑えていましたが、フェライニ選手が加わって前線に大型FWが2枚になるとマークが分散して一対一の守備では抑え切れないかもと心配していたのが現実となってしまいました。日本が長年苦手とするロングボールやクロスで空中戦を挑まれて苦しくなりましたね。

最後は延長戦突入寸前のアディショナルタイムに敵陣で手に入れたラストチャンスと思えるコーナーキックを本田選手がゴール前に蹴り込みましたが、日本選手には合わず飛び出した長身キーパーのクルトワ選手に捕られて陸上競技100Mダッシュの如く10秒を切る超高速カウンターを見事に決められて万事休す。あの時点では日本側ベンチの監督、コーチも選手達もベルギーの得意技である高速カウンターに注意が向かず、ラストチャンスのコーナーキックを入れてダメでも延長戦と考えていたかもしれません。タラ、レバの話になりますが、私見では日本選手が苦手な空中戦よりもショートコーナーで繋いで時間を使いながらグラウンダーのセンタリング(クロス)を狙った方がベターだったかも。本田選手も蹴る気満々でここが最後の見せ場とコーナーキックで決めてヒーローになる色気もチラついてショートコーナーの選択肢は全く頭になかったかもしれません。日本の数少ない長身の吉田選手他のディフェンス陣もゴール前に出てヘッディングやシュートチャンスを狙っていたし、それまでの攻守にわたる疲れもあったので、高速カウンターに対して戻り切れませんでしたね。最後の最後で基本的な体力差が出てしまった感があります。ベンチサブで控えていた岡崎選手の体調が万全だったら

最後の10分か15分間に交代枠として前線から相手にプレッシャーを掛け、中盤まで戻って相手の有効なパスコースを消し、敵陣ゴール前で隙あればゴールを狙い、また囮となる動きで相手ディフェンスを引き付け、味方が動きやすいスペースやシュートチャンスを作ったり出来たかもしれないのも心残りでした。もしベルギーに勝って次にブラジルと対戦していたらどうなっていたか?それも見たかったのでとても残念です。

それにしても、前評判は散々だった日本代表チーム、突然後任となった西野監督、コーチ、スタッフ、そして選手達、逆境を跳ね返してグループリーグ突破、決勝トーナメント進出、ベルギーを大番狂わせにあと一歩まで追い詰めた大善戦は立派、見事としか言えません。これも大きな話題になりましたが、敗戦のショックにもめげず、腐らず、いつもと変わらずゴミ拾いをしてスタジアムを後にした日本のサポーター、ロッカールームをゴミ一つないほど綺麗に片付け、ロシア語で「ありがとう」のメモを残して去った日本代表チームに同じ日本人として誇らしい気持ちになりました。関係者の皆さん、会場やTV、ネットで応援したファンの皆さん、お疲れ様でした。月並みですが、「感動をありがとう!!」

番外ですが、日本対ベルギー戦を取り仕切ったセネガルの審判団も立派でした。自国代表チームをファウルによるフェアプレー減点数の差で上回り、グループリーグを突破した日本チームに対して公平な審判が出来るか?と一部で懸念されていましたが、極めて公平・的確なレフェリングで要所を締め、白熱した試合の流れを止めるような無駄な笛は吹かず、脇役に徹した見事な仕切りでした。(拍手)日本チームは歴代フェアプレーがモットーで外国人コーチや一部の評論家からは「もっとずる賢くならないと国際試合では勝てない」と批評されたりしますが、対戦相手のベルギーも汚いプレーや危険なファウルがなく、最初から最後まで非常にクリーンなハイレベルの試合となり、サッカーファンでもファンでなくても、今大会屈指の好試合として世界中の人々がサッカーそのものを存分に味わえたのではないかと思います。同じ日に行われたブラジル対コロンビア戦で目にした汚いプレー、危険なファウル、挑発的行為や見苦しい演技が満載の試合とは雲泥の差でした。

もう一つおまけの番外ですが、大会開催直前の金髪染めと『おっさんパワー』発言で話題をさらった日本代表の左サイドバック長友選手の無尽蔵と思えるスタミナには改めて驚嘆しました。自陣での守備から中継ぎのパスの受け渡し、更に敵陣深くまで切り込んでのパス・アンド・ゴーやクロス供給までフィールドのあちこちに顔を出し、毎試合走行距離とスプリント回数で常に1、2位を争う走り屋ですが、ベルギー戦の最終盤の時間帯で他の日本選手が息が切れて疲労困憊の体でもTV放送のアップで映った彼はケロッとした顔で、延長戦になっても「まだまだ走れますぜ!」という雰囲気でした。同僚のサッカー選手や他のアスリート達も取り入れている日頃の体幹トレーニングやランニングスキルのお蔭でスタープレーヤーの外人選手にも負けない『おっさんパワー』恐るべし!足元の技術や体の向き、動きも重要ですが、サッカーの一番の基本は走り。それもスタミナとスプリント両方の組合せと使い分けが必要。次回カタール大会に向けて日本代表チーム候補者全員に今から同じトレーニングを是非お願いしたいですね。それと今大会のゴール数の内訳で目立ったセットプレーでの得失点。日本チームが攻守いずれもやや苦手としているところですが、イギリス代表チームがセットプレースキルの研究開発会社と提携し、専任コーチを設けて成功している事実を踏まえて、日本サッカー協会、日本代表チームも対策強化が必要不可欠と思われます。

長谷部主将と本田選手は今大会で代表引退を宣言しましたが、長友選手、香川選手には(岡崎選手、乾選手も)次回カタール大会にも参加し、『おっさんパワー』を発揮して今回唯一国内Jリーグからの代表参加となった昌子選手ら若手と共に史上初のベストエイト進出を是非とも達成して欲しいですね。

以上、『サッカー素人のワールドカップ雑感』でした。的外れな点あれば、ご容赦願います。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。