デトロイト美術館で 桃の節句 雛 祭りイベント 4

3月4日(日)、デトロイト美術館(以下DIA)の、この季節の恒例イベントとなった日本の雛(ひな)祭りイベントが開催された。在デトロイト日本国総領事館がDIAそしてJBSD(デトロイト日本商工会の共催によって企画をしているプログラムで、JSDウィメンズクラブや当地で日本の芸能や文化をたしなむ人々等の協力を得て、日本の伝統文化を紹介している。

  エントランスホール:Great Hallには、七段飾りの豪華な雛壇と着物の展示、生け花、折り紙と書道の実演展示ブース、折り畳み式茶室(内田繁デザイン)が設けられた。茶室は粗目の籠のように竹を組んだ壁になっており、中が見える造りで、実際に茶の湯の実演も披露された。その横では邦楽グループ『雅』による琴の演奏がアート空間に優雅さと憩いを与えていた。

  子供だけではなく大人たちもわくわくさせ、行列ができたのは「ガラポン」。いわゆる福引きで、箱を回転させて当たり玉をひく抽選である。景品には昨秋の日本ギャラリーオープンニングイベントの折に訪米した日本の伝統工芸師匠たちの作品も充てられ、ガラガラの音と「当たり~!」という声と嬌声がホールに響き渡っていた。外れた人にもお菓子が用意され、笑顔が広がった。

  生け花の実演披露は‟いけばなインターナショナルデトロイト支部”がおこない、当地で身近な花々から生まれた表情の異なる作品に、称賛の声や質問が集まっていた。別室で生け花ワークショップも2回実施され、先着20名の当日応募者がメンバーの手ほどきで生け花に挑戦し、器ごと家に持ち帰る幸運に預かった。生け方の配置図も配られ、花を切る長さの指示も分かりやすく、誰もが形よく仕上げけていた。カーネーションなど入手しやすく、そして少ない数の花で、見事な作品にしあげることができた喜びと驚きの感想が多数聞こえてきた。

  エントランスホールの奥、壁画アーティストの巨匠ディエゴ・リベラが描いた巨大なフレスコ画に囲まれた荘厳なスペース「リベラ・コート」にはステージが設えられ、書道、着付け、茶の湯、折り紙の解説つき実演、そして、琴の演奏が順次届けれた。

書道の実演は書家である藤井京子さんが身の丈以上の書を見事な筆さばきで披露。春を迎える喜びを表した四字熟語と和歌を選んで書き上げた。ダイナミックな書のパフォーマンスを見せた藤井さんはホールのブースでは写経を実演披露。賑やかなホールに静の空間が生まれていた。

  着物の着付け実演は桃の節句:ガールズデーに合わせて女の子が対象。来訪者から体験者を募り、多数の希望者の中から着物の丈に合う少女二人が選ばれた。補正の布や襦袢もきちんと付け、紐や帯を結んで晴れ着姿に整えるまでの煩雑な着付けの工程を、子供たちも魔法でも見るように興味津々の体で見入っていた。着付けの終わった少女たちをモデルにして、歩き方やお辞儀の仕方の手ほどきもあった。

  茶の湯を担当したJSDウィメンズクラブのメンバーたちは、同会場で多数の実演をこなしてきただけに、水場も無い即席の茶席ながらも、準備も実演も落ち着きと余裕があり、文化紹介のみならず豊かな時を提供した。お点前の進行に合わせた所作の意味の他、茶道具や掛け軸に関わる日本の美意識、‟おもてなし”の考え方についても説明が添えられた。

  折り紙の実演では、カルフォルニアから2014年にミシガンに移住した折り紙アーティストMs.Stacie Tamakiが紙を折るだけで楽しむことができる折り紙のPRや折り方のレクチャーを提供した。観客に折り紙が配られ、老若男女、スワンに挑戦。折り上げたスワンを誇らしげに掲げる子どもの笑顔がいかにも嬉し気で、ハンズオン:実践スタイルの文化紹介の良さを再認識させられた。

  様々な才能の人々による実演ステージの締めは『雅』の4名による箏の演奏。

1997年にスタートして以来、300件以上の日本文化紹介イベントなどで演奏をこなしてきた。今回は、水面に散った桜の花びらの情景を表している『花筏』、邦楽の代表曲のひとつ『千鳥』などを選曲。繊細で雅な音色に来訪者はうっとりとした表情で耳を傾けていた。日本の風情を感じさせる和やかな空間が広がった。子供の観客も落ち着いた様子で演奏を楽しんでいた。

  生け花のほか、和菓子作りのワークショップも開かれ、参加者は、どら焼きと、当地で出回っている缶詰の豆(Butter Beans)を使った茶巾しぼり風な菓子を作る機会を得た。缶詰やシュガーのサンプルが展示され、また、どら焼きの中身として、餡の他にいちごジャムやクリームチーズも用意され、和菓子が恋しい日本人にも有難いアイデア提供になっていた。

  米人来訪者からは、当地で日本文化の展示だけでなく、実演を見たり体験したりできる喜びの声が多数寄せられた。

  デトロイト美術館は、自動車産業の繁栄のもと1885年に開館し、着々とコレクションを形成し、今も6万5千点を超える幅広いコレクションを保持するアメリカ屈指の美術館の一つ。2013年にデトロイト市破綻とともにDIAも破綻したが、その翌年にJBSD会員を中心とした日本コミュニティによる$3.2ミリオンという多大な寄付金もあって美術館は存続。そして、その後DIAとデトロイト市救済のためにJBSD 会員の寄付金をつかって、昨年11月に常設日本ギャラリーが開設された。展示品に留まらず、生きた文化紹介を通して、日米交流は活発に続いていくことであろう。