先月号で触れた如く2月はあっという間に過ぎてしまいました。25日に閉会した平昌冬季オリンピックも開催前にはインフルエンザやノロウィルス感染や気温が低過ぎて屋根のないメイン会場で夜間の開会式が心配されましたが、何とか無事に終了してホッとしました。日本選手団は地元開催であった1998年長野オリンピックのメダル獲得数11個を上回る13個と見事な結果でした。特に日本の金メダル第一号となった男子フィギュアスケートの羽生選手の五輪連覇は感動ものでした。昨年11月、競技前の練習中に転んで右足首を痛めてからわずか3ヶ月、実際に氷上練習し始めたのは年明けから1ヶ月程で正に『ぶっつけ本番』でしたがショートプログラムはノーミス、フリーは着氷で体がぐらついたジャンプがひとつだけありましたが、怪我の影響を感じさせないほぼ完璧な演技でした。ワンツーフィニッシュした銀メダルの宇野選手がフリーの最初のジャンプで転び、どうなることかと気を揉みましたが尻上がりに調子を上げて2位でフィニッシュ。最初のミスがなければもっと僅差か逆転優勝もあったかもしれません。彼の天然系の発言や仕草と合わせてファンになりそうです。フィギュア女子もメダルこそ逃しましたが、宮原選手のフリーは優雅で自己ベストの完璧な演技でした。金・銀を取ったロシアの2選手は別格として銅メダルをもらってもおかしくないレベルでしたが、体格に勝るカナダ選手のスケールの大きさが有利に働いた審査結果と感じました。他にも女子スピードスケート500Mで金、1000Mで銀の小平選手、チームパーシュート(団体追い抜き)、1500M、1000Mで金・銀・銅セット取りした高木美帆選手とチームパーシュートとマススタートで2個の金メダルに輝いた高木菜那選手姉妹と同チームメンバー。史上初銅メダルの女子カーリングチーム、2大会連続銀メダルの男子スノーボードハーフパイプの平野選手、銀メダルの男子ノルディック複合ノーマルヒルの渡部選手、女子スキージャンプノーマルヒルの高梨選手と男子フリースタイルモーグルの原選手が銅メダルでした。もう20年近く応援している『中年の星』男子スキージャンプの葛西選手が競技当日ジャンプ時の天候的悪条件の影響で彼自身不甲斐ない成績で終わってしまったのは残念でしたが、次の「北京大会にも絶対出る」と宣言しているので、応援を続けます。自分が寒がりなので(近年特に)スキージャンプやフィギュアスケート以外は冬季オリンピックの競技種目には縁遠い私ですが、今回小平選手や高木選手姉妹のプロフィールや過去のエピソードを読む機会があり、就職氷河期に大学卒業時の就職内定取り消しによる選手生命の危機、オランダでの海外単独トレーニング、長期的な目標設定と地道な努力、姉妹間のけんか、確執、失望、妬み、復活・成長、一緒に金メダル獲得など皆さんそれぞれ大変な挑戦・努力とご苦労があった事を知り、尊敬の念が一層大きくなりました。米国選手を見るとヤンキーな若者ばかりかと思ってしまいがちなスノーボードの平野選手はインタビューのコメントや競技中・後の態度を見聞きすると大変しっかりした好青年であると認識を新たにしました。ステレオタイプ的な思い込みはダメだと反省しました。500M決勝で五輪3連覇の夢を砕かれ銀メダルに終わって涙ぐむ韓国のイ・サンファ選手に駆け寄り優しく慰めて感動を呼んだ小平選手は31歳の今も進化を続け、当初全く出来なかったオランダ語も海外トレーニング中にかなり堪能となり、中国語や韓国語も多少話せるようです。新たな挑戦や環境の変化にも動ぜず、挫けず、辛抱強く目標に向かって進み続ける強い精神力と優しい心根の持ち主なのですね。自身の貴重な経験と実績を基に将来現役を引退した後もきっと素晴らしいコーチになる予感がします。メダルを取れた人も取れなかった人もオリンピックに参加出来るだけでも大変な事です。皆さんお疲れ様でした!

冬季五輪の話が長くなってしまいましたが、今回のテーマは『冬季オリンピックの合間に思った事』です。

ニュース報道でご存知のように、冬季オリンピック開催中の先月14日フロリダ州パークランドの高校でまたも銃乱射事件があり、教職員・学生合わせて17名の尊い命が奪われました。同時に多数の怪我人も出ましたが、犯人は同校の元学生で素行態度に問題があり放校されていた男子学生でした。銃撃に使われたのは過去多くの銃乱射事件でも使われている悪名高き『AR15ライフル』と呼ばれる自動小銃で一度引き金を引けば自動で連射可能な恐ろしい凶器で、それが大量殺人に繋がってしまいました。被害者のご冥福をお祈りすると共にご家族および関係者の方々に心よりお悔やみ申し上げます。

事もあろうに、愛を語り合うべきバレンタインデーに起きてしまったおぞましい事件ですが、更に驚く事にこの犯人の異常行動やSNSなどへの挑発的な投稿内容が警察(保護者である義理親の家に40回近く訪問歴有り)やFBI(既に落ち度を認めた声明発表有り)にも度々通報・認識されていたにも拘らず、事件発生を防止出来なかった事実と事件発生時に現場に居合わせ銃を携帯していた保安官代理1名(既に辞職済み)と郡の副保安官3名が事件発生直後に校舎内に入らず、犯人捕縛や銃乱射制止を試みなかった事実が判明し、その理由調査・解明が進む中で大きな非難を浴びています。

もう何年も全米で同じ様な銃乱射事件が何度も発生しているにも拘らず、具体的で実効のある再発防止策の立法化が遅々として進まない現状に事件に巻き込まれた同校の学生やその親・関係者達の悲しみと怒りは大きく、「再発を許すな!」と学校構内や州政府庁舎での抗議デモ、ワシントンDCまで出向いてホワイトハウス前で座り込みならぬ寝込み抗議活動や代表者数名のトランプ大統領との面談、NRA(全米ライフル協会)から多額の政治献金をもらい国民が銃を所有し自己防衛する権利(所謂『憲法修正第2条』)を支持している地元選出のマーコ・ルビオ上院議員やNRAの女性広報部長などを招き(トランプ大統領とフロリダ州知事も招待されたが参加辞退)実況放送された同校学生や被害者の親達とのTV討論会、更にNRAからの銃所有を正当化する反論コメントや大統領からの類似コメント及び教師に銃武装させる(銃の販売が増えてNRAが喜ぶ)アイデア提案など今や米を揺るがす事態となっているのはご存知の通りです。高校生の方が政府関係者や国会議員達よりよっぽど真剣に考え、行動しています。

もうひとつ。これら一連の動きに前後して、銃規制強化を求める抗議活動の一環として同校のある男子学生がSNSに掲示した抗議コメント動画に対して、「彼は演劇部所属で売名行為で演技しているだけ」とか「抗議デモや集会に参加している連中は金をもらって雇われて参加している」などと銃規制反対派、銃所有支持派からと思われる心ない悪意に満ちた中傷コメント投稿や動画配信も出回り始めて純粋な生命確保・安全保証の要求行動では済まず、政治的要素を含んだ混乱と対立を深めています。

トランプ大統領の即興的アイデアは、教師全員ではなくある程度の割合の人数に銃の取扱い及び銃乱射発生時対応トレーニングを受けさせ、終了した人にはボーナスを払うとか思い付き程度の提案ですが、学生により良い人生を送ってもらい、より良い社会・人間関係を作るための知識と智恵を教える立場の教師に銃武装させるなどとはとんでもない提案です。本格的なトレーニングを積んだ本職の軍人や警官、セキュリティーガードでも正確な銃の扱い、射撃は容易でないのにパートタイム的で中途半端な

トレーニングでは誤操作・誤射の危険性があり、侵入者を阻止するどころか学生や教員に流れ弾が当たってしまう恐れがあります。決まったシナリオのない緊急時の対応では尚更です。

また、外部からの侵入者でなくても校内の学生や教員の中にたまたま精神的に不安定な人物がいて、失恋やいじめ、信頼を裏切られて絶望したなどの突発的な理由で銃武装している教師を襲って銃を略奪して乱射事件を引き起こす可能性もゼロではありません。銃武装した教師自身が学生や他の教員ともめてそういう切れた精神状態になって銃を乱射するかもしれません。故意か偶発かを問わず、銃乱射事件が発生するパーセンテージは変わらなくても、世間に存在する銃の数が多い程銃による犠牲者の数は多くなります。車の台数が多い程車の事故が多くなるのと同じ理屈です。数年前で全米1世帯当たり平均4~5丁の銃火器を所有しているという統計データがあったと思いますが、『平均』ですよ。中には10丁も20丁も持っている人がいる訳です。その全員が善人で常に精神状態が良く冷静で的確な判断と行動が出来る保証は全くありません。犯罪者や犯罪予備軍、悪意を持って銃を購入または入手した人物の危険性は言うまでもありません。

合法的な銃所有者のメンタルヘルス(精神の健康)を監視・維持する事も大事ですが、もっと喫緊で大事な事は世間に存在する銃火器の絶対数を限りなく減らす事です。軍人、警官、セキュリティーガードなど職業上銃を必要とする人達は別として必要最小限の数に減らし、合法的所有者を含めて銃コントロールを更に厳しくせねば同じ様な悲劇が繰り返されてしまいます。

何事にもPros and Cons(良い点と悪い点)は付き物ですが、Progress(進展)を止めたり遅らせたりしないようにCongressの議員達には今度こそ真剣にこの問題に取り組んで具体的な解決策に繋がる行動を起こして欲しいものです。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。