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喧喧諤諤 第176回:懸案事項と優先順位
掲載日:2017.10.10 | 喧喧諤諤

先月9月のミシガンは中旬に朝晩肌寒い日が続いてもう夏が終わったかと思わせましたが、秋分の日前後は記録破りの暑さがぶり返してエアコンの自動スイッチが入ったりして、通学・通勤するご家族やご自分のその日の服選びが結構悩ましかったのではないでしょうか?今月は安定した秋の天候になって少しは安心させて欲しいものです。

天候と言えば、先月はカリブ海から米国南部メキシコ湾岸を立て続けに襲った複数のハリケーンで同海域諸国やテキサス州、ルイジアナ州、フロリダ州では空前とも言える甚大な被害が出ています。ハリケーン「ハーヴィー」が米国本土に残した爪跡の復旧作業も間々ならぬところに更に規模と勢力の大きな「マリア」の襲来でドミニカ、ハイチ、キューバ、バハマの諸国の他米・英・仏領の島々が直撃され、観光地で有名な米国領バージン諸島、その中心であるセント・トーマス島は全島壊滅状態。米国準州であるプエルトリコも全島にわたる被害を蒙り、直後は全島100%停電で通常の固定電話はもちろん携帯電話も繋がらず、現地政府機関や救急サポート陣も被害状況の把握や救援計画の策定・実施のための相互連絡が出来ないどころか、一般市民と同様に離れて暮らす自分達の家族の安否さえ確認出来ない状況が続いています。首都サンファンではようやく部分的に電力供給が復活したものの緊急度・重要度に従って場所や時間が制限されており、安全な飲料水、食料品、燃料の確保が極めて難しく病弱者、ケガ人、乳幼児には一刻を争う緊急事態と言えます。また、電力不足で物品・サービス購入時のクレジットカード支払いが出来ず、現金そのものが大量に必要とのことで混乱に拍車を掛けています。首都でさえそんなですから島の端のような遠隔地や過疎地の人々は孤立無援の絶望的な状況です。一方、メキシコでは先の南部での地震に続いて首都メキシコシティー近くを震源とする強度の地震があり、こちらも大変な被害が出ています。ハリケーン騒ぎに紛れてニュース報道が途切れがちですが、ハリケーンで被災したテキサス州同様に日系進出企業、日本人出向・駐在・出張者や訪問者も多い土地柄ですので、取引先を含めて関係者の皆様のご無事と一日でも早い復旧をお祈りするばかりです。

さて、今月号ではスポーツの話題は割愛して本題の『懸案事項と優先順位』に入ります。

冒頭でも触れた自然災害を含めて、当地米国は目下かつてない程の国難に見舞われ、緊急事態に陥っています。

直近のハリケーン被害では米国本土のテキサス州では州内外の石油関連施設・事業の被害と営業損失や公共施設、一般家屋の損壊、経済活動の停止・遅延など、またフロリダ州では果樹園の冠水により柑橘類収穫の約95%が失われ、市場への供給不足、価格上昇と同時に観光収入減が予想され、両州だけでも少なくとも数十億ドル規模の経済的損失になると試算されており、州政府だけでは対応出来ず連邦政府の財政的支援を必要としています。更に輪を掛けてプエルトリコやカリブ海の米国準州、米国領諸島の災害救済、復興支援の追加予算捻出が追い討ちとなり、喫緊の懸案となっているオバマケアに代わる新健康保険制度の議会審議に加えて、今でも財政赤字と貿易赤字の「双子の赤字」で膨大な累積国家負債に苦しんでいる米国の税法改革案及び新年度予算案の議会審議・可決・承認がますます容易でなくなりました。

国外に目を向けると、この数ヶ月最大の衆目を集めている北朝鮮の核・弾道ミサイル開発問題が米朝トップ同士の深慮を欠いた大人気ない挑発的発言の応酬で政権幹部や共和党内部だけでなく米国民と諸外国の人々をハラハラさせ続けています。また、オバマ前政権時に推進していたTPP交渉や地球規模の環境保護と気候変動要因排気ガス抑制のための国際条約「パリ合意」から離脱し、EPAの各種環境規制も撤回、骨抜きにし、NAFTAの見直し・再交渉を目論み、イラン核開発凍結の多国間合意も白紙に戻そうとするなど、とにかくオバマ前大統領の実績、足跡、匂いを全て消し去ることに執念を燃やしている感があります。それも彼の過去の言動からチラチラあるいは時に露骨に見える米国最優先、白人至上主義、人種・性差別、移民制限、富裕層優遇の偏向思考と本音が根にあると思われます。

これだけ(この他にも)内外に山積みの重要問題、重大懸案事項を抱えているにも拘らず、トランプ大統領は相変わらずツイッターで自分の言いたい事だけ昼夜を問わずツイートしています。

先日来毎日のようにテレビやインターネットのニュース報道で取り上げられ、次第に騒音が大きくなりつつありますが、大分以前にNFLの某チームのクォーターバックの選手が始めた試合開始前の国歌斉唱時に通常は直立不動で胸に手を当て国旗を仰ぎ国家と国家の安全・警備に尽くす(尽くした)現役・退役軍人、警察官などに畏敬と感謝の意を表する代わりに不当な人種差別や不平等な扱いに抗議する意味でひざまずく行為をめぐって、極めて緊急で深刻なプエルトリコのハリケーン災害はそっちのけでトランプ大統領が発したツイートが物議を醸し波紋を広げています。

数ある物事の緊急度や重要度あるいは必要性や適切か否かは全く無視して、自分の好き嫌いで言いたい事だけは直ぐに言ったり、ツイートする全くもって米国大統領にあるまじき自分勝手で自己チュー(自己中心)的な気ままな行為です。KY(空気が読めない)と言うより最初から読む気がない、他人がどう思うか気にしないとしか思えません。

歴史を振り返りますと、米国だけでなく他の国でも国難と呼べるレベルの緊急時に際しては極めて優秀で能力の高い国家のリーダーが現れ、国家と国民を救う多くの事例がありますが、前例のない選挙戦で当選してしまった実務経験のない素人政治家で自己チューの現米国大統領は残念ながらこのような体たらくで、上述した内外の重要問題、重大懸案事項について緊急度、重要度に従って優先順位をつけてベストの問題解決、対応処理するという常識的な行動がとても期待出来ません。タイミング的に複数並行して同時進行で動かねばならない場合は尚更です。現政権幹部もほとんど政治活動未経験者の素人の集まりで、職権乱用的にプライベートジェット機や軍用機で夫婦で海外に公私混同の旅行に行ったり、複数回米国内を移動したりして国民の血税を何十万ドルも無駄遣いして平気な人達ですから、口では上手い事を言っても本音で「国民のために」何かする気はなく、一つひとつの問題に関してタイムリーにベストの対応処理をする事はまず不可能でしょう。大統領就任以降現在までに政権入りした幹部がどれだけ入れ替わったかを見れば、当初からの人選や政権内部の相互連絡、責任分担、業務進行がいい加減で穴だらけなのは明白であり、詰まるところは政権トップである現大統領の資質と能力不足そのものが根の原因ですね。

先月号の『トップの役割と責任』や先々月号の『政権運営とリスク管理』と言うテーマにも大いに関係しますが、本当にこの先「米国はどうなるのか?」「米国は大丈夫か?」と心配の種は尽きません。「困った時の神頼み」で神様、仏様に救いを求める以外に打つ手はないのでしょうか?暑い夏が過ぎて秋の夜長を迎えても眠れぬ夜が続くかもしれません。(溜息)

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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