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喧喧諤諤 第173回:つれづれに将棋のこと
掲載日:2017.07.9 | 喧喧諤諤

7月、今年も後半に入りました。ジメジメした梅雨の日本と違ってミシガンは蒸し暑い日が少ないので助かります。夏至も過ぎて少しずつ日が短くなりますが、まだまだ夜9時頃まで明るいので夏休み中の学生・生徒さんには色々楽しみの多い時期ですね。独立記念日の前後には少し長目の休暇を取って家族や友達と旅に出た方もいらしゃるのではないでしょうか?皆さん無事に帰宅され、それぞれ良い想い出が残っているといいです。

日本のプロ野球パリーグは東北楽天イーグルスと福岡ソフトバンク・ホークスで2強のマッチレースの様相。セリーグでは昨年の覇者広島東洋カープが今年も首位を独走。前半戦勢いのあった阪神タイガースはセパ交流戦を境に攻撃陣の貧打で得点が伸びず下降気味の2番手。ここに来て戦力が整いジリジリ浮上し始めた横浜DeNAベイスターズが3番手。球界盟主である読売ジャイアンツは史上最悪の連敗記録もあって何と最下位、巨人軍ではなく虚人軍かも?米国MLBではアリーグ東地区と中地区は上から下までほぼダンゴ状態。地元タイガースは先月負けが込んで勝率5割を割り元気がありません。西地区は開幕から好調のヒューストン・アストロズがダントツの首位独走中。ナリーグは東地区で首位のワシントン・ナショナルズが抜き出ていますが、中地区と西地区は混戦状態。今月11日のオールスターゲーム後の8月、9月が勝負どころです。テニスでは先月全仏オープン男子シングルスで10度目の優勝を飾ったナダル選手が完全復活した感あり、今月3日からスタートしたウィンブルドン大会でも全豪オープン覇者のフェデラー選手と共に優勝候補。どちらかが優勝すると8月末の全米オープンの結果次第で年間ランク1位復帰の可能性が現実味を帯びて来ます。日本のエース錦織選手は芝コートの前哨戦でまたまた怪我のため棄権し、ウィンブルドン大会では第9シードとなり、順調に勝ち進んでも準々決勝(ベスト8)前に上位シード4人の誰かと当たってしまう厳しい道のりです。とにかくこれ以上怪我に泣かされず、ベストプレーが出来ることを願うのみです。

さて、今回のテーマはがらりと趣を変えて『つれづれに将棋のこと』です。

ワシントンではロシアゲート、情報リーク、トラベルバン、トランプケアなどで相も変わらず騒がしい政争と疑惑地獄が現在進行中ですが、ちょっぴり明るい話題、楽しい話(の筈ですが)をしてみましょう。

皆さんも既に一度ならず見聞きされていると思いますが、日本のプロ将棋の世界で 先月26日に中学生棋士、藤井聡太四段が新人デビュー戦から公式戦29連勝という最多連勝新記録を打ち立てました。神谷八段がそれまで持っていた28連勝という連勝記録(デビュー戦からではない)を30年振りに破る歴史的快挙。『瀬戸物』やニューセラミックなど陶磁器、窯業で有名な愛知県瀬戸市出身で昨年10月に14歳2ヶ月という史上最年少でプロ入り後未だに無敗で勝ち続けています。それまで史上最年少プロ入り記録を持っていて先月引退した『神武以来の天才』と呼ばれ、『ひふみん』の愛称で知られる加藤一二三元名人・十段との対局がデビュー初戦であったのも新旧入れ替わり、世代交代の象徴として何かの縁を感じさせます。

昨年将棋界を揺るがした将棋ソフト不正使用疑惑問題(某棋士が対局中に席を外し、将棋ソフトを使って自分に有利な指し手を検索していたのではないかという疑惑で、調査後結果的にはシロの判定)で暗い沈滞ムードが漂っていた将棋界に新たな希望の光が射し始めたと言えます。将棋というと『おじさんの遊び・趣味』のイメージがあり、子供や若い女性からの関心は薄い環境でしたが、既に小学生、中学生の間で親達も含めて将棋クラブ入会申し込みが急増しているとかで、これが大きな転機となるかもしれません。1980年代後半から90年代に掛けて羽生善治(フィギュアスケートのゆず君とは別人)元七冠・現三冠を中心とする所謂羽生世代が若々しい新風を吹き込んだ頃の再現で、将棋界の救世主となるかもしれません。

ネット情報によりますと、藤井四段は将棋に出会う前の3歳頃に親から与えられた

『キュボロ』というスイス製の木製知育玩具で良く遊んでいたそうで、その話が地元テレビ局で報道された後一気に評判が高まり、スタンダード版がネットオークションで従来

32,000円だったものが70,000円にもなり、メーカーに注文殺到で今では半年以上待ちの状態だそうです。また、小学校入学前5歳の時に祖父母に将棋の手ほどきを

受け、ひらがなも読めない内から将棋の教本を読破(一体どうやって?)して以来記録尽くめ、話題尽くめの活躍を続けています。今月半ばに15歳になる若さにも拘わらず、今年になって既に数回TVの特集番組で取り上げられたりもして、記録やエピソードの数々を挙げるととても紙面に収まらないため、ご興味のある方はネットでググルか新聞、雑誌など刊行物をご参照下さい。

実は私も大学時代は将棋研究会に属し、将棋が数少ない隠れ趣味の一つですが、当地では将棋好きの人との出会いがなく今ではすっかり錆付いています。将棋の基本ルールや駒の動き方などは子供の時におじさん達の縁台将棋を見ながら覚えていましたが、それ程興味を持てず小・中学校時代は縁遠かったのですが、高校2年の夏何故か突然将棋の虫に取り付かれ、大学受験準備に集中しなければならない大事な時期に受験勉強に身が入らず、親の目を盗んでは近所の数年年上の兄貴分的知り合いの家に足繁く通って手合わせしてもらったりしておりました。先方もしょっちゅう来られて迷惑だったと思いますが、さすがに大学受験シーズンが近付いたその冬には自重して大学受験に合格、入学するまでは将棋の虫を押さえ込みました。入学後の校内オリエンテーションで早速将棋研究会を見つけ、一も二もなく入部した次第です。部活動では先輩、同期、後輩部員との対局、将棋道場での合同練習、プロ棋士の指導対局、合宿、他校との対抗戦、大学リーグ戦もありましたが、初心者レベルに毛のはえた程度の私はとてもレギュラーにはなれず、応援サポート役が主でした。

同じ頃、将棋雑誌を購読したり、大手新聞社主催のプロのタイトル棋戦やテレビの将棋講座、対局実況放送にも興味を抱き、学生の本分である勉強よりも将棋と部活動に熱を上げていました。将棋の魅力はゲームとしての面白さに加えて、個性豊かなプロ棋士の経歴やタイトル棋戦の勝敗や歴史に残る名勝負、それにまつわるエピソード、テレビ放送時の解説者コメント、新聞に何回かに分割掲載される棋譜と記者やプロ棋士の講評などがこれまた興味を引きます。時代と共に変遷する将棋の指し手や戦法にも独特の用語や名称があり、中には『桂馬のフンドシ』とか『雪隠詰め』、『穴熊囲い』など思わずニヤリと笑ってしまうものもあります。

私自身の経験から言える事は、将棋では「短気な人は勝てない」、ということです。形勢が不利な時とか指し手がはっきり分からない時に短気を起こして「えいっ、もう行ってしまえ!」とばかり指した手はほぼ間違いなく上手く行かず、相手を楽にしたり、喜ばす事が多いです。子供の頃どちらかというと気が短く、気分屋だった私は将棋のお蔭で辛抱強くなれたのかもしれません。将棋では『三手の読み』が最小単位です。つまり最低でも「自分がこう指して、相手がこう指して来たら、次はこう指そう」と三手一組で考えて指し手を進めないと行き当たりばったりで運任せの意味・意志のない指し手になってしまう訳です。プロ棋士は三手どころか数十手から百手以上の指し手をしかも何通りもの可能性を数秒から数分で頭の中で考えられるように鍛えられています。長時間接戦が続き、勝敗が付かぬまま所定の持ち時間を使い切ると1分とか30秒とか極端な場合10秒以内に次の手を指さなければならない『秒読み』になったりすると、この先を読む能力の優劣が大きく影響します。時間切れになれば、即『負け』です。

この先を読む能力とその場その時のベストの指し手を選ぶ能力、そして将棋をなさらない皆さんもお聞きになった事があると思いますが、短期的・部分的な優劣ではなく盤面全体を大所・高所から見渡して最終的に勝利に至るための『大局観』を養うには将棋は持ってこいです。これは将棋そのものだけでなく、人生やビジネスにも転用して役立てる能力です。私も多少なりともその恩恵に預かった経験が何度かあります。本当はもっと上手く使えたのかもしれませんが・・・

末尾になりますが、プロが指す本将棋以外にもはさみ将棋、回り将棋、飛び将棋、お金将棋、王手将棋、めくら将棋、衝立(ついたて)将棋、捕られずの銀将棋など遊び心一杯の変わり将棋も数多くありますので、これを機会に少しでも将棋にご興味のある方、老若男女やレベルを問いませんので是非ご一報下さい。お待ちしております。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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