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田川順照氏 特別インタビュー
掲載日:2017.03.13 | イベントレポート, 趣味

MrTagawa

デトロイト剣道道場の長である田川氏は2005年に最高段位である八段に合格。数多い剣道人口の中で優れた剣道家らが八段位を目指して稽古に精進しているものの、合格率が1パーセントを下回ることがあるほど八段試験は合格するのが非常に難しいことで知られている。田川氏は2015年全米剣道連盟会並びに国際剣道連盟副会長に就任。2013年には、剣道を通じた良好な日米関係の構築に寄与に対してデトロイト総領事より在外公館長表彰を授与されている。

そして昨年(2016年)5月、その八段の中で特に秀でた剣道家に与えられる剣道範士の称号を受称。全日本剣道連盟が授与する称号の最高位であり、日本国外では初の受称者となった。さらに秋には、日本と外国との友好親善関係促進において特に顕著な功績のあった日本国内外の個人及び団体を表する平成28年度外務大臣表彰を授与された。

昨年末、剣道道場(Novi Meadows Schoolの体育館借用)の練習の前にインタビューの時間をいただき、称号受称ならびに外務大臣表彰の感想と、アメリカでの普及についてお話を伺った。

Q: 国外で初めて「範士」という剣道界で最高の位を受称した想いをお聞かせください。技が優れているだけでは得られない称号だと聞き及んでいますが。

田川氏:日本でもなかなか授称できない最高の位ですから、光栄であり重責を感じています。海外での剣道の普及・発展への尽力や、アメリカ剣士を率いて世界選手権で入賞に導いたことなど、貢献度を評価していただいたのだと思います。世界選手権には審判として5回出場していますが、この回数は他には無く、普通は2、3回です。6回目には国際剣道連盟の副会長として出席しました。

IMG_1264Q: 1975年に剣道連盟の要請に応えて海外での剣道の普及のために渡米された当時の心境について、外務大臣賞受賞の受賞式典の答辞のなかで「熱い志を持って渡米」と語られましたが、もう少し詳しく思いをお聞かせ願えますか。

田川氏: 初めての国際大会が開かれて間もない頃で、きちんとした指導者が海外に居る必要があると感じていました。

ヨーロッパに渡った人もいました。とても意気込んでいました。ややもすると当てっこ打ち合い、チャンバラになりがちな剣道を礼法、着装、基本を正しく指導し、技術のみでなを高めるのでなく人間性を高める剣道を広めなくてはと剣道精神を持って渡米しました。

最初に渡ったロサンジェルスから、10数名の愛好家しかいなかったミシガンに移り、道場を立ち上げました。今やデトロイト道場は70人以上まで増え、また、州内に6つの道場があるほどになりました。

Q: 普及の成果が数でも分かります。アメリカでの指導の難しさは?

田川氏: まず、技の習得うんぬんより前に足が弱いなど体の違いがあり、そこからの指導でした。それと、映画などで観たチャンバラのイメージを持って、それで剣道に入ってくると全く違うわけで、基本稽古が長いことに飽きてしまいます。指導内容や言葉で興味を持たせるようにしながら続けてきました。

精神的な部分の理解は難しい。「礼に始まり、礼をもって行ない、礼で終わる」のが剣道です。おじぎという形の意味ではないです。礼儀が大切で、他のスポーツと違います。

Q: 日本的な精神面を言葉で説明できるものでは無いのでしょうね。

田川氏: 見せ続けること、体で指導することが大事だと考えてやってきました。よその剣道道場で(道場替わりの体育館で)、靴を並べていないとか、親は靴を脱がないとか、モップ掛けを親がしているとか、そういったことに対して、理由を説明して、

「違いますよ」と伝えて、一緒にやりました。体をもって教えなくてはいけないという例です。

Q: アメリカに合わすような妥協はしなかった?

田川氏: 剣道は人間形成の道です。その理念、精神性なしには有り得ません。そもそも、日本の伝統文化の良さを指導者が良く理解し勉強することが大切。上からの押しつけでは無く、理解をはからなくてはなりません。

このごろの若い剣士や子どもたちを見ていて、それが浸透していることを感じます。当初は、雑巾がけをさせると練習に来たがらないなど、アメリカ式にやって欲しいと親に言われたこともありましたが、間違っていなかったのだと感じています。

Q: 米国剣道がレベルアップしていますね。

田川氏: アメリカに来て7年目、32才の時に、ブラジルで開催された世界大会に全米チームのコーチを任され、「日本式に鍛えてやって」と言われ、徹底して厳しく鍛えました。結果、3位に導きました。指導が認められ、その後も選手の強化育成に努めてきました。

☆ ☆ ☆

インタビュー中、練習に向かうアフリカ系米人剣士にも話を伺えた。その若者ブライアンさんが剣道を始めたのは16年前(別の場所)で、その後、日本に5年間留学していた間には、剣道の他、居合道などの武道を週5回のペースでやっていたという。現在剣道四段。日本や中国の哲学、特に禅に興味があり、日本の伝統を学び続けている彼は、一般的な日本人以上に日本伝統の精神性に詳しく、また傾倒している。「剣道は生涯修行であり、その価値がある」と静かな口調で断言した。

田川氏は「彼のように剣道の真髄、さらに日本の伝統を学ぼうと考える人が増えると、正しく広がっていくことであろう」と語り、「彼のほか、アジア系、ヨーロッパ系、ラテン系、アメリカ人に繋がって広がった」「アメリカで剣道を始めた若者が今や道場を支えたり指導者になったりしている。嬉しいことです」と感慨深い感想で締めくくった。

日本での剣道国際大会をレポートした日本のテレビ番組の中、(日本には及ばなかったが)好成績を収めたアメリカの選手たちについて、日本人剣士が「気もちと姿勢は日本の選手と変わらない」と感想を寄せていた。田川氏の寄与したところが多大であるのは確かである。田川氏のご活躍と、当地での剣道の更なる発展を期待したい。

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