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喧喧諤諤 第169回:春の嵐:トランプ政権
掲載日:2017.03.13 | 喧喧諤諤

3月弥生となりました。先月半ばから下旬に掛けてデトロイト近郊で華氏69度(約20℃)の最高気温記録更新日を含めて1週間程馬鹿陽気が続きました。今年は本当に暖冬で、このまま春が来てしまうのではないかとさえ思います。

プロ野球では日米とも各球団がキャンプインし、つい先日始まったオープン戦からレギュラーシーズン本番目指してトレーニングと調整に余念がありません。また、今年は第四回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)開催の年に当たり、今月6日から各地で始まる1次ラウンドを皮切りに、2次ラウンドは12日と14日からそれぞれ東京とサンディエゴで開催。決勝ラウンドはロスアンゼルスにて20日と21日に準決勝戦、22日に決勝戦。例年以上に本気モードを感じさせる米国、キューバ、プエルトリコ、ドミニカ共和国、永遠のライバル韓国、着実に力を付けて来ている台湾、オランダ、メキシコ、カナダなど他の参加国に対して、前回3連覇を逃した日本代表の『侍ジャパン』は話題の

『二刀流』大谷選手が右足首の怪我が完治せず参加辞退した上、現役メジャーリーガーがヒューストン・アストロズの青木選手一人だけになってしまい少々残念ですが、過酷なメジャーリーグを主戦場としている選手達には参加したい気持ちもある一方で所属球団から参加を禁止されたり、長いレギュラーシーズンを怪我・病気なく安定した成績を残すために自重したりとそれぞれきちんとした理由があるので、「愛国心が足りない」と一概には責められません。たとえ一時的な寄り合い所帯のメンバー構成であっても日本代表特有の各選手の個性と能力を最大限に活かし、適材適所の役割・責任分担とバランス取れたチームワークで3度目の栄冠を勝ち取って欲しいですね。侍ですから「刀折れ、矢尽きる」まで戦う強い気持ちがあれば十分チャンスあり。「銃には勝てないよ」などと言わずにWBCでもMLBでも日本人選手達の活躍を皆さんも是非応援しましょう!

さて、遅ればせながら本題の「春の嵐:トランプ政権」に移ります。

大統領就任式から丸ひと月以上経過したトランプ政権はこのわずかな期間にも大小様々な話題を提供し続けています。通常新政権スタートから100日経過の頃に政権運営スタイルや実施政策の骨子と方向性が明確になると言われていますが、過去に前例のない選挙戦を勝ち抜いた、前例のない大統領の政権幹部選考は上院投票の過半数(最高裁判事は60票以上)が必要な549の主要ポジションの内2月21日時点でわずか14のみ承認済みという、これまた前例のない状況となっており政権だけでなく国政運営全般への負の影響が懸念されています。オバマ前政権発足時の上院承認手続きの際に共和党から妨害を受けた民主党が仕返し的に非協力的な要素はありますが、基本的には大統領による政権内最重要ポジションの候補者指名自体が過去の経歴および言動上物議を醸す人選であったり、大統領自身と同様に直接的な政治活動・官僚経験のないメンバーがほとんどで事前準備と根回し議論不足のまま選ばれた感が強い点が災いしていると思われます。

幾つか例を挙げると、財務長官のスチーブン・マヌーチンはゴールドマンサックス退社後ヘッジファンドを数社立ち上げ、2007年~2008年の金融危機の際に破綻した個人住宅融資会社のインディーマックを買取り、社名変更・再建後売却して大儲けした蔭で債務不履行でフォークロージャー(担保権執行)により持ち家を手放さざるを得なくなって泣いた多数の不幸な個人家主を生み出した責任を上院聴聞会で追及され、「当時は認識していなかった」と弁明し、辛うじて53-47の過半数超えで承認。司法長官のジェフ・セッションズは上院議員を務めた経験はありますが、1986年にアラバマ州南部地区地方裁判所の判事候補に指名された際に過去の公民権関連の批判や心ない人種差別的な発言疑惑が影響して落選。今回も聴聞会で史上初めて同じ上院のブッカー議員から指名反対のスピーチをされ、彼も承認投票は52-47の僅差で通過。

他にもエネルギー庁長官になった前テキサス州知事で前回、前々回の大統領予備選に出馬したリック・ペリーは州知事当時の2件の職権乱用疑惑で起訴され、昨年2月にようやく全ての嫌疑が晴れたばかり。石油産業王国であるテキサス州と自身の石油関連ビジネスの権益確保のため大統領予備選期間中にはエネルギー庁の廃止を声高に叫んでいた張本人がエネルギー庁長官に就任。前オクラホマ州司法長官のスコット・プルートは同州内の石炭火力発電の追加規制負担回避のため「地球温暖化は作り話。石油・石炭使用制限やクリーンエネルギー開発は無用」とオバマ前政権だけでなく環境問題で対立するEPA(環境保護局)を複数回提訴(2014年6月時点では全て敗訴。その後も提訴を続けており本年1月までにEPAを13回提訴)。他にも多数件の訴訟に関与しており、訴訟の国アメリカを体現しているその当人がEPA長官に就任する皮肉。

更に、Amway現社長夫人で教育長官になったベッツィー・デヴォス女史は公立学校よりもチャータースクール支援に力を入れており上院聴聞会で民主党のエリザベス・ウォレン女史から痛烈な質問を浴び、「あなた自身およびあなたの子供達は公立学校に通ったり、補助金を受け取って通った事があるか?」との質問に対して「幸いにも私と子供達は公立学校に通ったり補助金をもらって通ったりせずに済んだ」とまるで公立学校に通う事自体が不幸であるような回答をして顰蹙を買いました。承認投票では60-60のタイブレーカー役として当初出席していなかったペンス副大統領が急遽会場に駆けつけて1票を投じ、正に紙一重で承認。副大統領が決定投票したのも史上初めての出来事でした。また、国家安全保障顧問に就任したばかりのマイク・フリン元陸軍中将がトランプ大統領の正式就任前の昨年末、オバマ前大統領による対ロシア

制裁実施当日にロシア外交官と秘密裏に電話会談していた事実が判明して辞任に追い込まれ、急遽後釜に指名した第1候補者には『ワシントン新政権内の混沌』を理由に辞退される醜態を演じ、2月20日付けでようやくマクマスター陸軍中将の就任が決定。労働長官の役職に関しても当初大統領に指名されたアンディー・プズター候補者が辞退し、アレキサンダー・アコスタが就任しました。

総じて現大統領とその政権幹部に言える事は、軍関係者は別としてメンバーのほとんどがビジネスマンで各自一国一城の主であり、自分の考え、流儀を通して来た人達ばかりなので、他の人の意見を聞いたりじっくり時間を掛けて話し合ったり、意見交換・調整・合意するタイプの人達ではないため、幹部間あるいは大統領や副大統領とのコミュニケーション不足が露呈して記者会見や個別インタビューでの個々の発言内容に食い違いが出て政権に対する信頼度や安心感に齟齬を来たしています。トランプ大統領自身の発言やツイッター内容も事実と異なったり、不正確なものが多々あり、それを指摘したメディア報道に対して「TVニュースで見た」などとメディアに罪をなすり付けたり、政権幹部に関する不都合な漏洩ニュースが流れると「偽りのニュースだ」といちゃもんをつけたり、記者会見で気に入らないTV局やメディアの質問を無視または遮ったり、記者会見から締め出すなど選別報道、偏向報道に走る傾向も出て来ました。

未だに選挙キャンペーンの続きのような言動も多く、自分が歓迎される場所だけに行き、支持してくれる群衆に囲まれて気分良く過ごせる環境で「私が大将、主役で一番」でないと気が済まないようです。リーダーではなくヒトラーやローマ皇帝のようなディクテーター(独裁者、暴君、専制君主)ですね。全てが自分のため、自己満足のためで

“Me,me,me”と自己中心的。選挙中に支持してくれた有権者との公約を果たすとの名目で大統領命令連発を手始めに性急でゴリ押しの政策を続けて、相変わらず国民全体の融和(友和)は進まず、やる事なす事全てについて米国内だけでも反対・抵抗・抗議する人達が半数以上いるわけです。たとえ一時的に国内生産が増え、失業率が減り、給与や株価が上がって好景気に見えても、究極的にはトランプ帝国のビジネスが増え、一族が潤う事が唯一最大の目的と思われ、その一方で環境汚染、環境破壊が進み、自然災害件数と規模の増大、輸入規制やインフレによる物価上昇、各種差別や敵対による社会不安と犯罪の増加、結果として長期的には失業率が増加して富裕層と貧困層の二極化が更に進む恐れがあります。それを自分の非と認め、責任を取って国民のために解決策を考え、実施する大統領や政権メンバーとは思えないのが悲しく冷たい現実のようです。

トランプ政権による春の嵐はこの先も続くのか?それとも全米だけでなく世界中の人々を安心・安堵させるような奇跡の春が訪れるのでしょうか?Let’s hope for the best, plan for the worst!

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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