世の中がグローバル化してきたとはいえ、文化が違う国での生活では、楽しい事ばかりではなく、なかなか大変な面もあります。文化が異なると政治的な体制や経済の仕組みから生活方式・一般常識・習慣・人との接し方・マナー等、様々な事が違うゆえ、母国を離れ異国で生活をすると、個人差はあれ色々な調節が必要になります。ところ変われば、普段何気に行っていることが戸惑う要素になったり、“普通”が“普通”で通用しなくなるということが起こりますが、それは、私達個人的属性というものが文化と密接につながっているからです。文化は、歴史を通し、言語・信仰・芸術・道徳・法律・慣習・食文化など、あらゆるものの積み重ねにより作られています。通常、私達がなんのためらいもなく行っている言動には、実は様々なレベルで文化が浸透しているのです。私達の価値観、人間観、倫理観、生死観、概念というものは、文化に多大な影響を受けているものです。私達が異なる文化と接触するとき、様々な調節が必要となってくる由縁です。

 人によりその調節は異なりますが、一般的に、馴染みのない文化の中に入ると、“カルチャーショック”を体験します。カルチャーショックとは、新しい文化と自分の文化の調合調節、融合期間です。異文化の生活に慣れるまでに体験する様々な心理的浮き沈み期間を指します。その間、感情が高まることもあれば、不安定になることもあり、また、時には苛立ちを感じることもあります。また、母国では“良い”とされている言動が異国では誤解を生む原因になることもあります。例えば、日本では遠慮することがエチケットとされていますが、遠慮ということを常としないアメリカ人相手だと、その遠慮する気持ちが解ってもらえなくて気持ちが消沈したりするように、様々な文化の違いに接触することにより心理的動揺が起こります。私達は、普段、適切な言動は何であるかを無意識のうちに感じる“手がかり”のようなものにより、判断するわけですが、環境が変わるとその“手がかり”が見あたらなくなるのです。文化というのは、はっきりと目に見えるものでなく、また、私達が無意識に行う言動が文化の壁にぶつかるゆえ、心理的困惑が生じるわけです。

 様々な調整の中でも、海外生活をしている皆さんが多々遭遇されるトラブルのひとつは言語ではないでしょうか。言語表現があまり得意でない方は、異国語を使わなくてはならない為、言いたいことが相手に伝わらないもどかしさ感じたり、また、言語が堪能な方も含意される内容が把握できず、相手と通じ合えないことを体験されることがあるのではないでしょうか。その昔、私もアメリカに来た当初は、言語によるトラブルに悩まされました。例えば、スーパーマーケットのレジで“Paper or Plastic”って聞かれますよね。“紙かプラステック”か、何のことだろうと思いつつ精一杯の状況判断を下し、「そうだ、お金をまだ払ってなかったから、お金のことではないか?」と解釈し、紙幣の現金という意味で “PAPER”と答えたところ、買ったものを次々と紙袋に入れられ、バスで買い物に来ていた私は一体この荷物をどのように持ってバスに乗るやら困った体験があります。言語は文化と密接につながっているゆえ、こういったトラブルが生じるのは当然のことなのです。自分の語学力が足りないからだと落ち込んでしまう方もいらっしゃいますが、実は、言語から起こる多くのトラブルや誤解は、語学力とは関係なく、文化の違いから生じているものなのです。言語というのは、単に“言葉”でなく、その国の歴史=その国の言語となるからです。

 また、言葉以外のコミュニケーション、身振り、手振りなど、いわゆる非言語のメッセージを理解するのも一苦労です。同じジェスチャーが全く異なった意味を持っていることもあれば、母国で普通に使うジェスチャーが異国では失礼にあたったりと、文化が異なるとジェスチャーひとつをとっても大きな誤解が生じかねません。人とうまくコミュニケーションをとるのは、同じ文化・言語を持つ同士でもなかなか難しいものですが、異文化コミュニケーションとなると更に複雑となります。例えば、日本の大切な文化のひとつに「以心伝心」がありますが、これが異国アメリカにおいては、日本人とアメリカ人の間のミスコミュニケーションを引き起こす原因となります。アメリカ人の文化は「話し合いで分かり合う」というものの為、「心を察する」という日本の美しい文化がアメリカ人の文化においては「言葉にされていないものはわからない」となってしまうわけです。

 何事においても私達の生活、個人的属性は文化と切っても切り離せないため、文化の異なる国での生活には様々なストレスが伴うものです。文化は、いたるところに潜んでいます。ゆえに、生活環境の激変、異文化との接触というのは、思う以上の精神的な負担が心身的にかかります。文化調節ぐらいがなんだと思いがちですが、異文化適合がうまくかず、うつになられたり、パニック障害を患ったり、または、自殺・殺人にまで至ってしまう悲しいケースもあります。これらは、決して、珍しいケースではありません。異国での生活では、日常のストレスに加え、異文化適合のストレスも加わるため、ストレスは容易に倍増し、悩みが複雑化してしまいます。異国では支援が欲しくともなかなか必要なサポートが得られません。そんな折、安心できる心の専門家の援助を受けてみるのもひとつの手段かと思います。

 文化というものは、とても複雑でダイナミックです。異国生活は、心がワクワクすることもたくさんありますが、習慣の違いによるトラブルも多く発生する要素を持っています。例えば、親子でお風呂に入ったことが原因で、アメリカでは無い習慣のために性的虐待と判断され、親が逮捕されてしまうなど大きな事件に発展してしまうこともあります。異文化適合を円滑に行うためには、異文化に対する適切な知識、情報を得ることがとても大切です。ゆえに、近年では、グローバル化に対応するため、各企業にて様々なクロスカルチャートレーニングが盛んに行われています。クロスカルチャートレーニングとは、異文化の中では、どのような心構えが必要であるが、また、どのように適切な対応法を状況に応じて見出すか等、異文化についての知識、情報が得られるものです。具体的には、母国とは異なった組織のあり方への対応法、また、現地職員との適切なコミュニケーション法等、様々な国の方とのおつきあいをどのように円滑化していくかという能力の習得を図る場所です。家族向けのクロスカルチャートレーニングもあります。こちらは、異国での生活が順調に運ぶよう異文化での生活方式・一般常識・習慣・マナー等について学ぶというものです。多くの方が、言語の上達のため、ESLやELLサービスをご利用されているかと思いますが、問題なく安全な異国生活を行うため、クロスカルチャートレーニングも 共にご利用されるとよいのではないでしょうか。クロスカルチャートレーニングを受けることにより、異国での生活にも自信が持て、また、異文化の知識が向上することにより、更に語学力も増すのではないかと思います。私事になりますが、Lifescape Counselingでは、様々な法人向け、個人向けのクロスカルチャートレーニングも行っております。クロスカルチャー関連のセミナー、または、異文化適合グループをご希望の方は、私共までお気軽にお問い合わせください。

執筆者紹介:こあきバイヤーズドルフ

こあきバイヤーズドルフ: Lifescape Counseling LLC のオーナー、メンタルヘルスカウンセラー、クロスカルチャーコンサルタント。日本語にて様々な心のケアサービスを提供。

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